うたわれるハイランド
詩人ソーリー・マクリーンの作品と生涯
中央大学教授 小菅 奎申氏
ソ-リ-・マクリ-ン(Sorly MacLean)は,日本では、スコットランドの研究者の間でさえあまり知られていません。名前ぐらいは知っているという学者でも、彼の詩を読んでいる人はきわめて少数です。ところが、彼は20世紀スコットランドを代表する詩人、いやスコットランドの歴史の中で最も偉大な詩人の一人なのです。
なぜ知られていないのでしょうか?それは彼がゲール語で詩作しているので、英訳はあっても”英文学研究者”はほとんど無視しているからであり、また私達自身ゲール語文化に対してきわめ希薄な関心しか寄せてこなかったからです。この講演で、この偏りを少しでも軌道修正できたら幸いであると思っています。
彼は1911年、スカイ島と本土の間にある小さな島、ラ-セイ(Raasay)に生まれ、軍役についていた数年を除いて、72年に引退するまでずっと中等学校の教員ないし校長として働きました。ほとんどの作品は、この仕事の傍ら作られたのです。しかし、詩人マクリ-ンの名声は、引退後、スカイ島で悠々自適の生活を送り始めてから年々高まるばかりで、友邦アイルランドの詩人たち(ゲール語で詩作するか否かにかかわりなく)の間でも、ほとんどカルト的な存在にまで達しました。彼の生涯にも目を向けながら、主要作品のいくつかを味わってみたいと思います。