ホスピスの源流をさぐる
にのさかクリニック院長 二の坂 保喜 氏
「生命の操作が可能となった新しい人類の歴史の1ページを迎え、1970年代から急速に世界各国に広がり始めたホスピス運動を 『人権運動としてのホスピス』としてとらえ、1980年にロンドンのセント・クルストファー・ホスピで開かれた世界で最初のホスピス会議(バー・ミツバ会議)で報告したのは、アメリカ代表のシスター・ジータ・マリー・コッターであった」で始まる岡村昭彦の『ホスピスへの遠い道』(筑摩書房、1987)との出会いが、私のホスピスへの遠い日道の出発だった。
本書は「序・人権運動としてのポスピス」に始まり、続いて「1 アイルランドから見える世界の拡がり」 「2 われわれはいま、どんな時代に生きているのか」 「3 人間の健康な部分と病院という虚構について」 「4 市民ホスピス」 「5 マザー・エイケンヘッドの娘たち」と続いている。400ページに及ぶ重厚な書で、医学書院発行の「看護教育」に『21世紀の看護を考えるルポルタージュ ホスピスへの遠い道ーマザー・メアリー・エイケンヘッドの生涯』と題して19回に渡って連載されたものを一冊にまとめたもの。医師になって5年目くらいだった私は小倉の書店で偶然に見つけた本書に多いに触発され、ホスピス、そしてバイオエシックスへの道を歩始めた。本書の岡村の導きに従いながら、ホスピスの源流をたどり、私自身の在宅ホスピスの歩を振り返りながら、現代日本のポスピスの課題を探り、そして私たち一人一人の生き方を一緒に考える時間としたいと思います。