詩人イェイツの運命の女性-若くまた年老いた男
イェイツは、若い時から晩年まで、友人として、恋人として、親しい関係を持った女性が多くいた。詩人は、美貌と才能に恵まれていた彼女たちに報われることのない愛を捧げたために、詩人の心に忘れがたい面影を残し、運命の女性として詩の中に登場する。
その女性たちの中でも、生涯を通じてファム・ファタールとなった女性は、「23歳のとき、私のこの世での悩みが始まった」と述べているモード・ゴンである。さらに、もう一人あげるとすれば、オリヴィア・シェイクスピアであろう。
イェイツと二人の女性との親交の詳細については、互いに交わした書簡や伝記などから明らかになっているが、詩の中に登場する二人の女性は、意中の女性を称える恋愛詩の主人公として不朽の姿を詩の中に残しているわけではない。
イェイツの詩の特色は、詩人としての成熟とともに、華麗な文飾を廃し、言語表現を切り詰め、堅牢、強靭で、時にはアイロニカルで知的な文体へと発展していく。初期の恋愛詩は、その背後に自伝的要素が隠されているが、ロマンティックで、夢幻的なケルトの薄明の世界の中での悲哀が歌われている。
時間の濾過作用とともに、個人の秘事の痕跡をできるだけ作品の表面から払拭したいという意図も働いていたことは否定できないが、詩人としての成熟とともに、恋愛詩の対象が詩人個人のいわば神話的世界の中の登場人物の域にまで昇華し、変容されているような印象を受けることもある。
いくつかの詩作品を通して、イェイツの運命の女性が詩作品の中でどのように歌われているかを検証し、あわせて詩の技法のオーガニックな発展を解説したい。
《プロフィール》 藤本黎時(ふじもと れいじ)
1932年、広島県呉市生まれ。広島大学文学部英語英文学専攻卒、大学院文学研究科博士課程修了。広島大学名誉教授、広島市立大学名誉教授、広島女学院常任理事、など
所属学会: 国際アイルランド文学研究協会会員、同日本支部会員、日本イェイツ協会会員、日本アイルランド協会会員、広島アイルランド交流会名誉会長、広島日英協会 理事、など
主要著訳書: 『ヨーロッパ的人間』(共著、勁草書房)、『イェイツーアングロ・アイリッシュのディレンマ』(渓水社)、『アイルランドとスコットランドの昔話』(小峰書店)、『ラオスの民話』(大日本絵画)など。
講 師 | 広島大学名誉教授 藤本黎時氏 |
日 時 | 2014年4月27日(日) 14:00~16:00(13:3f0開場) |
会 場 | 婦人会館 大研修室(9F 福岡市中央区舞鶴2-5-1 ℡092-712-2662 |
参加費 | 一般1500円 / 会員無料 * 当日、会場で直接受付ます。 |
主 催 | 日本ケルト協会 |
後 援 | 福岡市、福岡市教育委員会、(公財)福岡市文化芸術振興財団 |