定例会
多摩美術大学 教授/芸術人類学研究所 所長 鶴岡 真弓氏
ユーロ=アジア世界とケルト【神話と象徴のデザイン力】■「日本/列島」は、大航海時代以来、インドやカタイ(中国)の彼方にある「極東の島国」として描き出され『魏志倭人伝』に記されたように東海の彼方の周縁とみなされた。しかし北半球で最大にして地球上最も多様な民族文化を培ってきた「ユーラシア」大陸を見渡せば、この極東の列島は「東の縁(ふち)」ではなく、「東の極み」を占める文明の「極」であることを発見させられる。■つまり日本/列島は、ユーラシア「世界」を東の極みから眺望するヴィスタを占め、その芸術文化は、およそ一万年前の縄文文化から、「開かれたユーロ=アジア性」を、芸術や宗教儀礼に表し営みをつづけてきた。 ■たとえばアイヌの人々の衣「アトゥシ」は、シベリア沿海州のナナイ族の人々の花嫁衣装にいまも生きる曲線文様を共有し、「フローラ(植物)界とファウナ(動物)界」を交流させた、北方ユーラシアに普遍的な「生命のしるし」のデザインとして、遠く西の極みの北方ヨーロッパ文明(たとえばケルト文明)の意匠にまで、通じている。■今回はこれまで個々別々に観察されてきたユーロ=アジア世界の民族・集団の芸術の間に動的に「分かち持たれた共有性」から見直してゆき、ヨーロッパの基層ケルトがいかに「ユーロ=アジア世界」とネットワークをもち「神話と造形のデザイン力」を培ってきたか、そのダイナミズムについてお話いただきました。