W.B.イェイツと能狂言
滋賀大学教授 真鍋晶子氏
W.B.イェイツは、2015年、生誕150年を迎え、昨年は世界各地でイェイツ関係の企画が催されました。私自身アイルランドを含め、そのいくつかに参加し、日本との関係を整理することが求められていると実感しました。
イェイツと日本と言えば能を思い浮かべる方は多いでしょう。アメリカ人アーネスト・フェノロサが日本で能楽に感動し、書きためた遺稿に心動かされたアメリカの詩人エズラ・パウンドが、イェイツに能楽を伝授したときに、何が起こったのでしょう。今回は、イェイツが能楽のどのような点に惹きつけられたのか、また、その結果どのようなものを創り出したのかを考えたいと思います。また、能楽のなかでも、狂言との出逢いについては、あまり取り上げられないので、狂言とイェイツについてもご紹介します。
狂言と言えば、笑いがその核心にあります。「イェイツと笑い? はて?」と思われるかもしれません。この点から見えて来るイェイツの局面も検討しましょう。
演劇は実際の公演抜きには語ることができません。イェイツはアイルランド文芸復興運動の中心人物としてアベイ座での公演プロデューサーとして活躍しました。作品を舞台化する過程から見えて来るものも、実際の公演を紹介しながら検討します。公演を前提とした創作程に、イェイツと同時代を生きた日本人数名が重要な役割を果たしました。その人たちも紹介できればと思います。
能との出逢いでイェイツが生み出した第一作『鷹の泉』の初演から、今年は100年になります。 100 年経った今も、イェイツの作品は様々な形で演じられ、新たな息吹を与えられています。イェイツの劇は、現代の私たちに何を語りかけてくれるでしょうか。過去のものとならないイェイツの現代性とは何か。みなさんとご一緒に、私たち個々の中にイェイツが語りかけてくれる声を聞き取りたいと思っています。
<プロフィール>真鍋晶子(まなべあきこ)
京都大学文学研究科英語学英米文学専攻修士課程修了。現在、滋賀大学教授。アイルランド、アメリカのモダニズム詩と劇を、エズ
ラ・パウンドおよび、彼を中心とする文学者(W.B.イェイツ、アーネスト・ヘミングウェイなど)を核に研究。主な著書『ヘミングウェイとパ
ウンドのヴェネツィア』(彩流社、2015年、共著)、『アイルランド文学』木村正俊編(開文社出版、2014年、共著)、『ヘミングウェイと老
い』高野泰志編(松籟社、2013年、共著)など。