2002年日本ケルト協会の歩み
3月24日 | 特別企画 熊本県のペテログラフを訪ねて ~第5回 |
熊本先史岩石芸術協会の武内一忠会長の案内で、ケルトを想起させる熊本県の菊池川流域周辺の遺跡を見学。大津町無田原のストーンサークルはサイズ、素材とも似たものが文献によれば、ニューグレンジ古墳の基底部の遺構にある。また山鹿市のチブサン古墳などにある文様(三角、四角型を組み合わせたもの)もニューグレンジ古墳入り口などにある線刻に似ている。さらにアイルランドなどに残る古代のオガム文字に酷似した刻みがある石碑が建つ神社もあった。 | ||||
4月14日 | 定例会/ 講演 ケルト・アイルランドへの関心 その映像文化的性質とその背後にあるもの |
アイルランドには、文字から絵を組み立てるという知的な想像力を働かせてきた伝統がある。我々は『ケルズの書』に代表される視覚的なものに目を奪われがちだが、その背後にある言語的側面に目を向けて欲しい、と講師の愛知学院大の風呂本武敏教授。イェイツやワイルド、ジョイスら作家の作品や言動、それに古くから語り継がれ大衆に好まれた戯れ歌などを通して、特異性を発揮してきたケルト文化の優れた一面を紹介。
※2003年2月発行『CARA』10号に収録
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6月23日 | 定例会 / 講演 アイルランド現代美術事情私見 |
講師は神谷徹・京都造形芸術大講師。19世紀のケルティック・リバイバルでは、隆盛を極めたケルト紋様に再興のエネルギーはなく、権力と結びついていた絵画の題材がJ・B・イェーツ(詩人W・B・イェーツの弟)らによって民衆を対象にした作品を生み出し話題を呼んだ、と説明。アイルランド留学中に知り合った現代美術作家3人や日本の奈良美智、村上隆の作風を解説して現代美術の鑑賞法にも触れ、自分の感性で作品に真摯に対峙することの大切さを説いた。
※『CARA』10号に収録
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8月24日 | ケルト・アイリッシュ音楽祭 アルタン in 福岡 天神・スカラエスパシオ |
男性ダンサーのダン・ステイシーを伴って2年ぶり2度目の福岡公演。独特のギターやフィドルの音色、マレード・ニ・ウィニーの美しいヴォーカル――アイルランドの魅力がいっぱいの舞台は、400人を越す満員の観客席と一体になって盛り上がった。 | ||||
6月23日 | 定例会 / 講演 漂白者ジョイスの<こころ>をさぐる―作品と妻ノーラとの関わりを通して |
「終生、大陸を漂白しながらも、故国に文学の題材を求め続けたジョイスにとって妻ノーラは文学に無縁であるようで、実はジョイス文学の核となる『母なるアイルランド』そのもであり、先祖ケルトの大地母神的存在でもあった」と、講師の吉津成久・梅光学院大教授。少女時代、ノーラと遊び友達だった、という102歳になる老婦人とアイルランド留学中に知り合い、このときの対話から得た、ノーラの知られざるエピソードも紹介された。
※『CARA』10号に収録
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9月15日 | 公開講座 アイリッシュダンス ワークショップ 福岡市中央市民体育館 |
96年に続いて2度目の開催。会員を含め29人が参加。アイルランド伝統文化の紹介に努めているCCEジャパンのダンスクラスメンバーの指導。 | ||||
12月22日 | 定例会 / 講演 ドラゴンと蛇― ケルトと北欧神話から 九州の金印蛇紐まで― |
福岡市の志賀島から出土の金印は、アイルランド―北欧―中国―日本を結ぶ、動物様式のひとつの表象として捉えることが出来る。金印の握り部分の紐を通す穴がある蛇紐(じゃちゅう)を指して、論を展開したのは、講師の鶴岡真弓・立命館大教授。著書『装飾の神話学』などで、ユーロ・アジア―日本を横断する装飾美術の比較文明論を展開されている。太宰府市観世音寺の梵鐘の頂にある「龍頭」にも触れ、ユーラシア大陸とつながりが深い北部九州を際立たせた。
※『CARA』10号に収録
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