亡霊のアイルランド:ジェイムズ・ジョイスを中心に
中村学園大学流通科学部講師 田多良俊樹 氏
「モダニズムの巨匠」たるジョイスが、初期の短編集『ダブリン市民』において、亡霊をどのように扱っているのかを検討してみたい。まず、厳密な意昧ではどこにも亡霊が登場していないように見える短編に、実は亡霊が登場していることを確認する。この「ゴースト・ハンティング」の作業を経て、ジョイスが、その文学的キャリアの初期の段階から、アイルランドにおける心霊主義や神秘主義といった文化的伝統に反応していた可能性を探る。
講演日は初夏の頃。今回のように、ジョイス文学における亡霊を語る=怪談をするの一興かもしれない。いないと思っていた亡霊がいたと分かって「ヒヤッ」とするのを十分に楽しむために、聴衆の皆様には、邦訳でも良いので『ダブリン市民』を事前に一読されたい