イースター蜂起とアイルランド人作家

イースター蜂起とアイルランド人作家

西南学院大学准教授   河原真也 氏

『ダブリンにある、コノリー、ヒューストン、ピアースという鉄道ターミナルr駅はいずれも「イースター蜂起」の指導者の名前が駅名になっています。意外と知られていないのですが、その他の駅にも歴史的事件の指導者の名前が付けられています。かってキングズタウンとよ呼ばれたダンリアーリ駅にはマリン(mallin)が、海岸のリゾート地であるブレイにはディリー(Daly)が、そしてクロムウェルが上陸したドロヘダにはマクブライド(MacBride)が。このようにアイルランド共和国では、英国からの独立の道をひらいた「イースター蜂起」が社会の至るところに歴史の記憶としてとどめられ、国家のアイデンティティの象徴として今なお尊重されているのです。この歴史的大事件から百年を迎える2016年に向けて、新聞の投書欄などでは、記念行事がどうあるべきかと多くの意見が交わされています。かって国民的詩人W・B・イエイツは、有名な’Easter 1916’の中で先に挙げた指導者の名前に言及しました。では現代のアイルランド人作家(芸術家)はこの事件をどう描いているのでしょうか?この武装蜂起の評価をめぐっては、英国からの独立後、美化された面が多いことが近年の研究で明らかになってきました。今回は20世紀半ば以降の作家(芸術家)が描く「イースター蜂起」の表象を参考にしながら、20世紀初頭のアイルランドの社会事情を検証すると同時に、この事件が神格化された背景を探っていきたいと思います。

父の絵と私

父の絵と私

住田康啓  日本ケルト協会会員

「My original ltinerary~美術館、コンサートハシゴ旅」
黒永 美奈子  日本ケルト協会会員

イェイツと柳田國男

イェイツと柳田國男

詩人     吉増 剛造氏

『ケルトの薄明』を著しましたW・B・イエイツ(11865年~1939年)の生涯と『遠野物語』の柳田國男さん(1875年~1962年)の一生が、ほぼかさなっていて、おなじように、妖精の邦への深い関心をもつ時代をおなじくしつつ、どうやら相似た魂の、・・・「詩人」と言うよりも「想像力のヒト」らしいいと気付きましたのは、『遠野物語』(明治43年、1910年6月刊)に先立つ『石神問答』(1910年5月刊)の次のくだりを目にしたときのことでした。
『久しぶりの御書面なつかしく拝見  殊に数々の御話につけて更に又六角牛草地峰の山の姿を想ひ浮べ候  ザシキワラシに似通ひたる欧羅巴の神々、調べ候はぼ限なき興味可有之候へども  小生は今以て其余暇無之候  先年YeatsがCeltic Twilightを一読せしこと有之候  愛蘭のフェアリィズにはザシキワラシに似たる者もありしかと存じ居候  遠野物語は早く清書して此夏迄には公にし度願に候へども 何分目下は石神のこと中途にて打棄てがたく・・・・』 (文中、太字は引用者)
書面の宛先は、『遠野物語』の語り部であった、佐々木喜善(鏡石)氏、・・・
柳田さんが尋ねられたのは、トーノにいる、ウスツキツコやカッパに似た存在、果たして欧羅巴にもいるのでしょうかという質問。どうでしょう、傍点のところから(「イエイツ研究」)に引用した時から十数年)はじめてここに傍点を置いてみて、柳田さんのこころ躍り、昂ぶりが読みとれたのだと思う。謎のようにいわれて来た『遠野物語』序言の「此書を外國に在る人々に呈す」は、このこころ躍りから出たものといって、ほぼ間違いはない。
さて、福岡での日本ケルト協会さんから奇跡のようなお誘い・・・『遠野物語』に先立つこと二年、三十三才のときの少佐官僚柳田國男の九州旅行の大切さを、残されたテープのお声を通して、この機会にみなさまに届けてみたい。イエイツは、声もそうですが小生のYeats Visionという14,5分の短編のお披露目も。

中央ヨーロッパ・ケルトの古代遺跡を訪ねて

中央ヨーロッパ・ケルトの古代遺跡を訪ねて

2013年4月~12月 イタリア・ドイツ ・スペイン・他
2014年1月~3月 アイルランド・ イギリス・ スッコトランド

西南学院大学教授  勢一 智子氏

当会では中央ヨーロッパのケルト遺跡を訪ねる研修の旅を予定しています。
その事前学習を兼ねて、ゲストの方に現地の様子をお話しいただき、多角的な視点で考えて行く「トラベルスタディー」を行なっています。
4月27日(土)は西南学院大学教授 勢一 智子氏にドイツ留学中に体験された各国の様子をお話いただきます。
ドイツ・スイス・オーストラリアの三カ国が国境を接するボーデン湖。この湖は3つの国を色々な形でつないでいます。いずれの国もドイツ語が話されており、似ているところも多いのですが、それぞれ大変個性的です。3カ国の個性が融合している国境地域について、日常の暮らしを通じて地域の魅力をご紹介します。

普及講座& アイリッシュダンスと音楽の交流会2013

普及講座&アイリッシュダンスと音楽の交流会2013

日本ケルト教会アイリッシュダンス講師 青木トモエ 氏

当会では1996年から折に触れてアイリッシュダンスの講座を設けてきました。
2013年もアイリッシュダンスをより多<の方々に親しんでいただくために普及講座を継続して行います。当会独自の講師によって、全く初めての経験がない方でも判りやすく、基礎ステップからダンス曲を踊れるように指導していきます。対象は子供~大人まで、年齢制限はありません。
最後には発表の場を設けます。

CARA第20号 2013年3月

会報誌cara第20号
会報誌cara第20号

■ケルトの魅力
~アーサ-・コナン・ドイルを中心に~
井村君江

■Seamus Heaneyの詩の世界
江崎義彦

■中央ヨーロッパの『ケルト』を探る
武部好伸

■アイルランドの食文化~伝統食から
モダンアイリッシュまで
松井ゆみこ

■北東北・三内丸山遺跡と遮光器土偶を
訪ねてレポート
山本啓湖

■会員投稿
岩瀬ひさみ
奈加靖子

■アイルランド通信
大倉純子
藤田需子


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トリスタンとイゾルデ (Tristan and Lseult)

トリスタンとイゾルデ
(Tristan and Lseult)

帝京大学教授 日本ケルト協会会員 木村俊幸氏

毎月第1金曜日、夕方6時から8時まで、主にアイルランドの作家を中心に原書による輪読会を行なっています。これまでイェイツやシングやジョイスなど、アイルランドを代表する文学者の作品を読んできました。今回は少し趣向を変えて、トリスタンとイゾルデの愛と死の物語です。
この物語は、アイルランド、ウェールズ、コンウォール地方を含むケルト文化圏に伝わる古い伝承にその起源をもち、アーサー王物語の中でもひときわ精彩を放つ一挿話として愛好されたきました。我が国でもリヒャルト・ワーグナーの同名の歌劇によってよく広く知られています。
輪読会の進め方は、前の月の輪読会でそれぞれテキストの担当部分(1ページから1ページ半)を決めておいて、翌月の輪読会で担当者が訳読を行い、その後、講師を中心に全員で難解な語句の意味や解釈の難しい箇所などをめぐってディスカッションするというものです。文学や語学に関心のある方は奮ってご参加ください。途中参加もOKです。
テキストはイギリスの歴史小説家ローズマリー・サトクリフによる再話、Tristan and Lseultです。

「水上往還」 ~アイルランドにおける航海譚と異界の風景~

「水上往還」
~アイルランドにおける航海譚と異界の風景~

中央大学教授  松村賢一 氏

アイルランドに残存する数多くの神話や伝統は古代・中世の物語として今に伝えられていますが、その源はストーリーテリングとよばれる《語り》でした。ストーリーテリングは伝承の過程で変容しながらも、多くが12世紀のアイルランド修道院文化の黄金期を経て文字に写されていきました。中でも異色な物語群に中世の航海譚があります。『ブランの航海』は最も古い航海の物語とされ、日本古代の常世の国を彷彿とさせる異界の風景が存分に写し出されています。妖精の誘いをうけ、潮路はるかな「女人の国」を訪れたブランの一行がアイルランドの岸辺に還って来た時には、幾百年が過ぎていました。この話はどのような心性から生まれたのでしょうか。万葉集や丹後風土記逸文などに遡る神仙譚の浦島子に似ているところがあります。
このほかにラテン語による『聖ブレダンの航海』と酷似した『マールドゥーンの航海』、アイオーナ島から二人の修道士が海上巡礼する『スネーフサとリーラの息子の航海』、天国と地獄をモチーフにした『コラの末裔三兄弟の航海』などがあります。とりわけ『コラの末裔三兄弟の航海』はキリスト教の贖罪巡礼をめぐる航海譚ですが、贖罪ではなく悟りとして観音菩薩のもとに生まれ変わることを願った日本の僧たちの補陀落渡海についても触れたいと思います。

CARA第19号 2012年3月

会報誌cara第19号
会報誌cara第19号

■アイルランドと日本の出合い
~イェイツ『鷹の井戸』をめぐって
高橋睦郎

■イェイツの劇作品入門
河野賢司

■イェイツの初期の恋愛詩について
木村俊幸

■イェイツとアイルランド
-神話と紛争に生きた詩人
木原謙一
■亡霊のアイルランド
ジェームズ・ジョイスを中心に
田多良俊樹

■イェイツと女性たち   -過去、そして現在
大野光子

■アイリッシュハープの歴史~
18世紀の復興運動と愛国主義
寺本圭祐
■佐渡が島と火焔土器を訪ねる旅
山本啓湖

■会員投稿
私とケルトの出合い
森 玉枝

■アイルランド通信
「ドニゴール/デリー通信」
大倉純子
「リトル・ミュージアム・ダブリン」
織田村恭子


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