定例会 アイルランドのラグビーいろいろ

日本ケルト協会・ケルトセミナー/福岡アイルランド協会併設記念

アイルランドのラグビーいろいろ

アイルランド研究家  犬石万蔵氏

 2019年にラグビーワールドカップ日本大会が開催されます。福岡では10月12日にアイルランド戦
が博多の森球技場で行われます。長年に亘ってアイルランドのラグビーについて研究されている
犬石万蔵氏にお話を伺います。

第1部 13:00~14:30「アイルランドのラグビーいろいろ」
アイルランドで人気を集めているスポーツや現状、アイルランド代表チームやIRFU(アイルランド・
ラグビー協会)に属する各クラブチームについて映像を交えて語っていただきます。
 第2部14:45~16:45 「日本でアイルランド代表をサポートする極意」
世界中から来日するアイルランド・サポーターとの交流の仕方やアイルランド代表チームを迎える
にあたってのマナーなど役に立ちそうな秘訣をお話しいただきます。

《プロフィール》 犬石万蔵(いぬいし まんぞう)
札幌出身・東京都在住。学生時代にヒンドゥー教を学び、教員生活を経て、40歳前半にアイルランドの生活を約1年半楽しんだ。 Co. Mayoのゴング村のパブの2階に滞在し、朝から晩まで村人と遊んでいた。ラグビーは地元のバランローブ・クラブの応援をして、ダブリンに出かけたときは、IRFUを訪ねていろいろな情報をもらった。帰国後は全国チェーンの予備校で世界史を担当し(福岡校でも指導)、現在はアイルランドについての講話や執筆を行っている。

講 師  犬石万蔵氏
日 時 2018年11月18日(日) 13:00~16:45 (12:30開場)  
会 場
あいれふ講堂 [健康づくりサポートセンター 10F] 福岡市中央区舞鶴2-5-1   ☎ 092-751-2827
 参加費   一般1500円  会員 無料 *当日会場で直接受付ます。
主 催 日本ケルト協会     http://www.celtic.or.jp keiko-y@celtlic.o
後 援 福岡市 、(公財)福岡市文化芸術振興財団
日本ケルト協会事務局   福岡市博多区麦野1-28-44 Tel/Fax092-5了4-0331
http://www.celtic.or.jp keiko-yoceltic.or.jp
お問い合わせは事務局へ

アイリッシュ・ダンスの歴史と現状

日本ケルト協会・ケルトセミナー/福岡アイルランド協会併設記念

アイリッシュ・ダンスの歴史と現状

成城大学非常勤講師 山下理恵子氏

 コンサートやテレビでみかける「アイリッシュ・ダンス」はアイルランドでどのように踊られてきたのでしょうか?
ダンスの背景にある社会的文脈を探ると、踊ることがより楽しくなることでしょう。
アイルランドでダンスを普及させたダンシング・マスターから、文芸復興運動の中でアイデンティティとしての意味を与えられたダンス、さらに近年のトレントまで、歴史を紐解きながら見識を深めていきましょう。
また人気が高いセット・ダンス「ランサーズ」つてどこから来たの、どうやって踊られているのかについて聞いた後、みんなでランサーズを踊ってみませんか?

《プログラム》
第1部  13:00~14:30
「アイリッシュダンスの歴史と現状」
休憩 …………………
第2部   14:45~16:45
アイリッシュダンサーな昼下がり
「クレアランサーズでケーリーを楽しむ

《プロフィール》 山下理恵子(やましたりえこ)
東京外国語大学外国語学部卒業、ダブリン市立大学修士諜程修了、関西外国語大学博士課程修了。「アイリッシュ・ダンスとアイデンティティ」の研究で言語文化博士号取得。大学講師、翻訳家、ライター、CCEジャパン会長、日愛協会理事。著書:「アイルランドでダンスに夢中」(東京書籍)「アイリッシュダンスへの招待」(音楽の友社)「アイルランドを知るための70章」(明石書店)等。

命日時

講 師  成城大学非常勤講師    山下理恵子氏
日 時 2018年9月9日(日) 13:00~16:45 (12:30開場)     
会 場  あいれふ講堂 [健康づくりサポートセンター 10F] 福岡市中央区舞鶴2-5-1   ☎ 092-751-2827
 参加費   一般1500円  会員 無料 *当日会場で直接受付ます。
主 催 日本ケルト協会     http://www.celtic.or.jp keiko-y@celtlic.o
後 援 福岡市 、(公財)福岡市文化芸術振興財団

現代アイルランド文学に息づくアイルランド語の伝統

日本ケルト協会/ケルトセミナー

現代アイルランド文学に息づくアイルランド語の伝統

京都大学大学院准教授池田寛子氏

 現在アイルランドが誇る文学と文化の土台として、アイルランド語の伝統は重要な位置を占めています。アイルランド語で紡がれた詩歌や物語は19世紀半ば以降盛んに英訳され、現代の作家たちにもインスピレーションを与えてきました。今回は「変身」にまつわる伝説とそれに着想を得て新たに創造された文学作品を取り上げ、フィクションの背後にある現実に迫りたいと思います。
鳥への「変身」を軸に展開する物語として、アイルランドには「白鳥になったリアの子どもたち」と「スウィーニーの狂気」という伝説があります。後者は鳥になって戦場から逃げ出した王をめぐる伝説です。どちらの場合も変身で物語が完結するわけではなく、変身は物語の始まりにすぎません。
スウィーニーは失われた王としての自分や王国の記憶に翻弄され、変身の前と後の二つの世界の間で引き裂かれるような思いを抱えて生き続けます。変身譚はアイルランド特有のものではありませんが、これらの物語が今日まで多くのアイルランド人作家の創作意欲を掻き立ててきたことには、アイルランドならではの事情もあるのではないかと想像されます。鳥として自然界をさまよった人の物語には、なぜかアイルランドの人々の胸に絵空事とは思えない強烈なリアリティを持って迫るものがあったようです。変身物語から連想されたことのーつに、アイルランド語話者から英語話者へと「変身」したアイルランド人の運命があります。
変身にまつわるギリシアの伝説の数々が世界を魅了したように、アイルランド古来の変身物語にも時空を超える深い含蓄があり、現代人のさまざまな心の情景と響きあうものがあります。英語とアイルランド語の作品からの抜粋を丁寧に読み解きながら、物語世界を想像力によって体験していく時間を分かち合いたいと思います。

【プロフィール】池田寛子(いけだひろこ)
現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門はアイルランドとイギリスの文学。大阪大学文学部卒業後、京都大学大学院人間・環境学研究科に進学。同研究科博士課程修了。博土(人間・環境学)。京都大学在学中に国際ロータリー財団奨学生としてユニヴァーシティ・カレッジ・ダブリンに留学。2001年より広島市立大学国際学部講師、助教授、国際研究科准教授を経て現職。主著 編訳:『ヌーラ・ニゴーノル詩集』新・世界現代詩文庫11(土曜美術社出版販売、2010年)、単著:『イェイツとアイリッシュ・フォークロアの世界 一物語と歴史の交わるところ』(彩流社、2010年)。
共著:木村正俊編『アイルランド文学-その伝統と遺産』(開文社出版、2014年)「第三章:18世紀アイルランド語詩 この世にはない法廷を求めて一二つの詩篇に響<アイルランド女性の声」。共訳・分担執筆:ブライアン・メリマン著・京都アイルランド語研究会『真夜中の法廷-18世紀アイルランドの至宝』(彩流社、2014年)。

講 師   京都大学大学院准教授  池田 寛子氏
日 時 2018年6月10日(日) 14:00~16:00  (13:30開場)     
会 場  あいれふ講堂 [健康づくりサポートセンター 10F] 福岡市中央区舞鶴2-5-1   ☎ 092-751-2827
 参加費   一般1500円  会員 無料 *当日会場で直接受付ます。
主 催 日本ケルト協会     http://www.celtic.or.jp keiko-y@celtlic.o
後 援 福岡市 、(公財)福岡市文化芸術振興財団

●主 催  日本ケルト協会
●後 援  福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団
日本ケルト協会事務局 福岡市↑専多区麦野1-28-44 Tel/Fax092-5了4-0331
h七七p://www.celtic.or.jp keiko-yOceltic.or.jp

アイルランドと「イギリス」 –連合王国(United Kingdom)と帝国(Empire)のはざまで–

日本ケルト協会/ケルトセミナー

    アイルランドと「イギリス」
–連合王国(United Kingdom)と帝国(Empire)のはざまで–

大阪経済大学経済学部教授  山本 正氏

 かつて1800年から1922年まではアイルランドは全体としてイギリス国家(大ブリテンおよびアイルランド連合王国)の一部であった。しかし、1922年に北東部6県一現在の「北アイルランド」-を除く26県がアイルランド自由国として独立し、現在はアイルランド共和国となっている。では、なぜアイルランド(の大半)だけは他の地域(スコットランドやウェールズ)と異なり独立したのであろうか。
ひとつには、「連合王国」(United Kingdom)のなかで唯一人口の圧倒的多数をカトリックが占めていたことが挙げられる。16世紀にイングランド(とウェールズ)では上からの宗教改革が、スコットランドでは下からの宗教改革が成功し、プロテスタント化したのに対して、アイルランドではイングランド型の宗教改革が挫折するとともに、大陸からの対抗宗教改革勢力が浸透したからであった。
もうひとつには、アイルランドは「イギリス帝国」(British Empire)の植民地としての性格が強かったことが挙げられる。アイルランドは中世盛期(12世紀)から近世(17世紀)に至るまで数次にわたってイングランドあるいはブリテン島からの征服・植民の対象となってきた。そしてまた、近世(17世紀)以降はイギリス国家に対する従属性を強めていっ
たのである。
本講演では、このようにブリテン諸島の一角を占め、一時は連合王国を構成しながら、他方でイギリス帝国の植民地に分類すべき存在でもあったという、アイルランドの「イギリス」に対する特異な歴史的関係を浮き彫りにしたい。

【プロフィール】山本正(やまもとただし)
1958年京都府京都市生まれ。 1981 年大阪大学文学部卒業。1986年大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。
その後、大阪経済大学教養部専任講師、同助教授、大阪経済大学人間科学部助教授、同教授を経て、2009年より大阪経済大
学経済学部教授。日本アイルランド協会副会長。主要著作:『「王国」と「植民地」一近世イギリス帝国のなかのアイルランド』(思
文閣出版、2002年)、『図説アイルランドの歴史』(河出書房新社【ふくろうの本】、2017年)『コモンウェルスとは何かーポスト帝国
時代のソフトパワー』【細川道久との共編】(ミネルヴァ書房・2014年)

講 師   大阪経済大学経済学部教授 山本 正氏
日 時 2018年4月22日(日) 14:00~16:00  (13:30開場)     
会 場  健康づくりサポートセンター 視聴覚室  (あいれふ8F)
福岡市中央区舞鶴2-5-1   ☎ 092-751-2827
 参加費   一般1500円  会員 無料 *当日会場で直接受付ます。
主 催 日本ケルト協会     http://www.celtic.or.jp keiko-y@celtlic.o
後 援 福岡市 、(公財)福岡市文化芸術振興財団

日本ケルト協会
福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団
日本ケルト協会事務局 福岡市博多区麦野1-28-44 Tel/Fax092-5了4-0331
http://www.celtic.or.jp keiko-yoceltic.or.jp

『中世アイルランドの修道院と文化』~アイオナ修道院を中心に~

本ケルト協会/ケルトセミナー一日愛外交樹立60周年記念

『中世アイルランドの修道院と文化』
~アイオナ修道院を中心に~

大分工業高等専門学校准教授 田中美穂氏

 アイルランドは、ヨーロッパにおいて、最も早<全土がキリスト教化された地域の一つである。
600年頃までにアイルランド各地に教会や修道院が創建されていった。なかでも、スコットランド西部のヘブリディーズ諸島内の島に建てられたアイオナ修道院は、ブリテン諸島北部へのキリスト教布教の中心地となった。ブリテン諸島全土のキリスト教化やキリスト教文化の形成に対して、アイオナ修道院が果たした役割はきわめて大きい。
アイオナ修道院を創建した聖コルンバは、アイルランド北西部の有力な王族ケネール・ゴニルの出身であった。アイルランドで複数の修道院を建てたのちに、「キリストのための異郷遍歴者」となるために、故郷を離れてスコットランドの小さな島アイオナに航海した。563年にここに修道院を創建し、自身が初代アイオナ修道院長となった。597年にコルンバは死去したが、彼を称える詩や聖人伝が執筆された。
9代目アイオナ修道院長の聖アダムナーンが7世紀末に執筆した『聖コルンバ伝』は、コルンバのみならず、アイオナ修道院に関する最も重要な史料である。コルンバはブリテン諸島各地に赴き、各地の王や王族、司教や修道院長らと交流する。コルンバと彼らとの関係を通じて、ブリテン諸島北部の政治状況がうかがえる。修道院での生活や文化の営みについても『聖コルンバ伝』から多<を知ることができる。
今回の講演では、『聖コルンバ伝』の舞台となったアイオナ修道院を中心に、7世紀頃のアイルランドの修道院と文化についてお話ししたい。

【プロフィール】田中 美穂(たなかみほ)
京都府綾部市出身。東京都立大学大学院人文科学研究科史学専攻博士課程修了(博士:史学)。大学院生時代、国際ロータリー財団奨学生としてアイルランド国立大学ユニヴァーシティー・カレッジ・ダブリンに留学。現在、大分工業高等専門学校准教授。専門は中世アイルランド史。共著:『アイルランドの経験一植民・ナショナリズム・国際統合』(法政大学比較経済研究所/後藤浩子編、法政大学出版局、2009年、「第1章中世アイルランドにおける「ネイション」意識」)、『イギリス文化入門』(責任編集:下楠昌哉、三修社、2010年、「第5章 イギリスの宗教と生活」)など。論文:「中世初期アイオナ修道院とタール・リアダ王権 - 『聖コルンバ伝』における王の聖別の叙述をめぐる一考察」(『史学雑誌』110篇第7号、2001年)、「「島のケルト」再考」(『史学雑誌』第111編第10号、2002年)、「アイルランド人の起源をめぐる諸研究と「ケルト」問題」『大分工業高等専門学校紀要』(第51号、2014年)など。

『風と共に去りぬ』とアイルランド表象

日本ケルト協会/ケルトセミナー一日愛外交樹立60周年記念

『風と共に去りぬ』とアイルランド表象

東京外国語大学名誉教授 荒このみ氏

 『風と共に去りぬ』(1936)の主人公スカーレット・オハラは、アイルランド人を父親にフランス系アメリカ人を母親にして生まれました。
著者マーガレット・ミッチェル(1900-49)は、アメリカ南部のジョージア州アトランタ生まれで、両親ともにアイルランド系です。アメリカの歴史上、最大の出来事であった南北戦争を背景にした大河小説を書くにあたり、著者は自分がアイルランド系アメリカ人だからという理由で、主人公の父親ジェラルド・オハラをそのように設定したのでしょうか。
ジェラルドはほとんど無一文でアメリカへ政治亡命します。すでにアメリカへ亡命していた長兄次兄と同様に、英国へのレジスタンス運動に加担していました。そのころから百年たって、ようやくアイルランドは英国の自治領になりますが、英国から完に独立してアイルランド共和国になるのは1949年のことです。
父親からアイルランド人の血を引く、ビートルズのジョン・レノンは、「たまたまアイルランド大だったら」という歌を作りました。英国リヴァプールはアイルランドに近く、そこで反骨の精神を養ったのでしょう。レノンは反戦歌を作り、反戦運動に積極的に参加します。 19世紀に多くのアイルランド大が世界の諸国に移住しましたが、それぞれの地域でアイルランド魂を育み、その出自を忘れることはありませんでした。この品からアメリカにおける「アイルランド表象」の意味を探りましょう。

【プロフィール】荒このみ(あら このみ)
1946年 埼玉県生まれ。お茶の水女子大学卒業。東京大学大学院博士課程修了。中央大学、津田塾大学、東京外国語大学教
授、立命館大学客員教授を経て、現在、東京外国語大学名誉教授。博士(文学)。
主著に、『マルコムX一人権への戦いー』(岩波新書)、『歌姫あるいは闘士ジョセフィン・ベイカー』(講談社)、『アフリカン・アメ
リカン文学論一一「ニグロのイディオム」と想像力』(東京大学出版会)、『黒人のアメリカー誕生の物語-』(ちくま新書)など。
訳書に、マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』全6巻(岩波文庫)。

生と死のケルト美学-アイルランド映画に読む〈女性的原理〉の可能性ー

日本ケルト協会/ケルトセミナー一日愛外交樹立60周年記念

生と死のケルト美学-アイルランド映画に読む〈女性的原理〉の可能性ー

広島大学教授 桑島秀樹氏

 僕をとらえて離さないアイルランドをめぐる鮮烈なイメージの群れがある。道に迷い牧羊犬に追われた夕暮れの緑野、ひっそりと佇む修道院の庭で施しを享けたスコーンと紅茶、霧のなか「妖精女王」の城をかすめて流れる琥珀色の大河、古代ケルト王の伝説が残る平原の巨岩城。これらの風景は、250年ほど前に生きたアイルランド人美学者を追った現地調査の旅のなかで偶然めぐり逢ったものどもである。
アイルランド/ケルト固有のイメージへの興味は、今回の講演でも触れる古今の「アイルランド映画」をめぐる思索を呼び込むことになった。具体的には、『アラン』(R・フラハティ)や『静かなる男』(J・フォード)、さらに『フィオナの海』(J・セイルズ)、『ONCEダブリンの街角で』(J・カー)、そして『フォースの覚醒』(J・J・エイブラムス)などなど。映画分析の道程にはつねに、アイルランド的感性とは何か、という問いがあった。映画の構成原理の究明を通して浮かびあがったのは、「メタモルフォーゼの美学」「インターフェイスの存在論」といった世界観。「ケルトの女戦士 」「肝っ玉おっかあ」といった人物造形の系譜である。それはまた、「海」の崇高さとも共鳴していた。
アイルランド/ケルトの感性文化を象徴する、このようなたおやかで強靭な地母神的気質の析出は、かの地で深く交わった人々、わけても女性たちとの交歓の日々なしには不可能であったと思う。昨年9月、僕は、二冊目の単著『生と死のケルト美学』を世に問うた。本書は、「美学としては異端の書かもしれない。しかし、僕にとって「美学」とは人生と共鳴していなければ意味がない。ここに登場する場所も人も 一むろ画のワンシーンも一 すべては、現実と夢のなかで融けあっている。
講演では、書籍に結実させたこのような想いについて、すなわち、アイルランド/ケルト的感性のはらむ豊かな可能性について、「アイルン映画」を切り口に、ざっくばらんにお話ししようと思っている

【プロフィール】桑島秀樹(<わじまひでき)
現在、広島大学大学院総合科学研究科教授。専門は、美学・芸術学・感性哲学。1993年3月大阪大学文学部美学科卒業。同大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員PDを経て、2004年4 jlより広島大学総合科学部助教授。2016年2月より現職O同年4月より研究科長特別補佐(国際交流担当)。2011年4月より一年間、トリニティ・カレッジ・ダブリン客員研究員(歴史学)としてアイルランドに滞在。主著に、『崇高の美学』(講談社選書メチエ、2008年)、『生と死のケルト美学-アイルランド映画に読むヨーロッパ文化の古層-』(法政大学出版局、2016年)など。

フィンとフィアナ戦士団の伝承の多様性とその人気の秘密を探る

日本ケルト協会/ケルトセミナー一日愛外交樹立60周年記念

フィンとフィアナ戦士団の伝承の多様性とその人気の秘密を探る

アイルランド伝承文学研究 渡辺洋子氏

 アイルランドの伝承には、甲乙つけがたい二人の英雄がいる。アルスター英雄伝説のクーハランとフィアナ戦士団の話群のフィン・マックールである。アルスター英雄伝の中心的な話は、1世紀頃コナハト地方の女王メーブとアルスターのコンフール・マック・ネッサ王の宮廷の若い英雄クーハランが一頭の雄牛をめぐって繰り広げる争奪戦「トーイン」でそれは今でも人気である。アルスター英雄伝は古い写本にかなり整った形で残されていて、現在語られる話も写本の内容と大差はない。一方フィンとフィアナ戦士団の話は12世紀になるまで、写本には断片的にしか登場せず、その出自については研究や推測がなされている。しかし興味深いことに、アルスター英雄伝がその物語自身の外にあまり広がりを見せていない一方で、フィンとフィアナ戦士団の話は民間伝承の語り手たちの最も好むジャンヌで、語り手の想像力の羽に乗って様々な話に展開し、増幅し、フィンの姿も様々に変容している。またアイルランド各地に、巨人化したフィンの名を残す風景が沢山ある。今回はアルスター英雄伝と比較しながら、フィアナ戦士団の伝承の多様性と民衆の間でのその人気の理由を探ってみたいと思う。

<プロフィール>    渡辺洋子(わたなべようこ)
聖心女子大学英文科卒業。アイルランド伝承文学研究。 朝日カルチャーセンターでアイルランドの伝承文学や短編小説を英語で読む講座、アイルランド語の講座を担当。四谷のディラ国際語学アカデミーで英語、アイルランド語の講座を担当。 (株)朝日旅行のアイルランド・ツアーの企画、同行講師を務める。著書および論文『子どもに語るアイルランドの昔話』(こぐま社)『アイルランド民話の旅』(三弥井書店)以上共編共訳『アイルランド自然・歴史・物語の旅』訳書『塩の木のほとりで』(アンジェニラ・パーク作)論文「初期の文学のフィンと民話のフィンーニつの顔をもつアイルランドの英雄」(『昔話-研究と資科-35号』日本昔話学会)、「日本の昔話の中の呪物」(『昔話研究の諸相 小潭俊夫教授喜寿記念論文集』昔話土曜会)などがある。

James Joyceの“The Dead”から聞こえてくる「暗闇にかそけく降りしきる雪花の音

James Joyceの“The Dead”から聞こえてくる
「暗闇にかそけく降りしきる雪花の音」
一「ケルト的アイルランド性」に関する一考察-

梅光学院大学名誉教授  吉津成久氏

James Joyce の短編小説集 Dubliners(『ダブリン市民』)に収められた作品の多くにおいて、とりわけ最後の“The Dead”(「死せる人たち」)において、主人公が経験する「エピファニー」(epiphany)が重要な意味をもってくる。ジョイスによれば、ごくありふれた日常的なものに対する認識が非日常的な重要なものに変化する瞬間の精神的啓示を自分が受けたカトリック教育の伝統から借りた言葉として’epiphany'(顕現)と呼ぶ。 “The Dead” の主人公ゲイブリェル・コンロイは、物語の最後においてこのepiphanyを経験する。 妻グレタから、アイルランドの西の都ゴールウェイの少女時代に愛し合った少年との思い出とその早すぎる死の悲しみを告白されたゲイブリエルは、暗闇の中で生者にも死者にも降り注ぐかそけき雪花の音を聞きながら、彼の意識は死者の憩う西方へ赴き、「かそかな」死の世界の住人から、現実に生きる自分の誇りや欲情をはるかに超えて真実に生きることのあり様を啓示される。主人公の「魂の死と再生」の瞬間である。本セミナーは、このジョイスの“The Dead” を主要な拠り所として、「人生の最後」(‘the last end,’「暗闇」や「影」が象徴する)を心に留めながら生きるという「ケルト的アイルランド性」の顕著な特徴について論考をすすめるものである。同時に、ジョイスの文学をはじめ、アイルランド文学の最大の特徴は、我々の人生が、生きている人たちと同じく、死んだ人たちに囲まれて生きているのだということを感じさせてやまないという点に注目する。

    <プロフィール>吉津成久(よしづ しげひさ)
1937年山口県生れ。早稲日大学及び同大学院、米国カリフォルニア州オクシデンタル大学大学院、テネシー州ヴァンダビルト大学大学院でヨーロッパおよび英米文学専攻。1987~8年アイルランド国立大学UCDの客員研究員。現在梅光学院大学名誉教授。近年は、学生やアルス梅光(生涯学習センター)の受講生を伴ってアイルランドへの研修旅行を実施。
著書:『二十世紀英文学の出発』。『アメリカ詩の原点』、『ジョイスからジョイスへ』など。

W.B.イェイツと能狂言

W.B.イェイツと能狂言

滋賀大学教授 真鍋晶子氏

 W.B.イェイツは、2015年、生誕150年を迎え、昨年は世界各地でイェイツ関係の企画が催されました。私自身アイルランドを含め、そのいくつかに参加し、日本との関係を整理することが求められていると実感しました。
イェイツと日本と言えば能を思い浮かべる方は多いでしょう。アメリカ人アーネスト・フェノロサが日本で能楽に感動し、書きためた遺稿に心動かされたアメリカの詩人エズラ・パウンドが、イェイツに能楽を伝授したときに、何が起こったのでしょう。今回は、イェイツが能楽のどのような点に惹きつけられたのか、また、その結果どのようなものを創り出したのかを考えたいと思います。また、能楽のなかでも、狂言との出逢いについては、あまり取り上げられないので、狂言とイェイツについてもご紹介します。
狂言と言えば、笑いがその核心にあります。「イェイツと笑い? はて?」と思われるかもしれません。この点から見えて来るイェイツの局面も検討しましょう。
演劇は実際の公演抜きには語ることができません。イェイツはアイルランド文芸復興運動の中心人物としてアベイ座での公演プロデューサーとして活躍しました。作品を舞台化する過程から見えて来るものも、実際の公演を紹介しながら検討します。公演を前提とした創作程に、イェイツと同時代を生きた日本人数名が重要な役割を果たしました。その人たちも紹介できればと思います。
能との出逢いでイェイツが生み出した第一作『鷹の泉』の初演から、今年は100年になります。 100 年経った今も、イェイツの作品は様々な形で演じられ、新たな息吹を与えられています。イェイツの劇は、現代の私たちに何を語りかけてくれるでしょうか。過去のものとならないイェイツの現代性とは何か。みなさんとご一緒に、私たち個々の中にイェイツが語りかけてくれる声を聞き取りたいと思っています。

<プロフィール>真鍋晶子(まなべあきこ)
京都大学文学研究科英語学英米文学専攻修士課程修了。現在、滋賀大学教授。アイルランド、アメリカのモダニズム詩と劇を、エズ
ラ・パウンドおよび、彼を中心とする文学者(W.B.イェイツ、アーネスト・ヘミングウェイなど)を核に研究。主な著書『ヘミングウェイとパ
ウンドのヴェネツィア』(彩流社、2015年、共著)、『アイルランド文学』木村正俊編(開文社出版、2014年、共著)、『ヘミングウェイと老
い』高野泰志編(松籟社、2013年、共著)など。