CARA第17号 15周年特別記念号 2010年6月

会報誌cara第17号
会報誌cara第17号

■水上往還
-アイルランドにおける航海譚と異界の風景
松村健一

■ケルトの水脈
-ブルターニュ(ブレイス)が
ケルトを意識するとき
原  聖

■漢とローマ-倭とケルト
西谷 正

■15周年記念行事
「ケルト・アイリッシュ音楽とダンスのつどい」
「ケルト・アイルランド文化の交流展」
「ブレンダン・スキャネル
駐日アイルランド大使歓迎会」

■会員投稿
「ダブリン市民」のように博多を歩いてみる
山本啓湖

■アイルランド通信
「アイルランドイースター事情」
織田村恭子


会報誌CARAバックナンバーご紹介

※購入をご希望の方は事務局にお問合せ下さい

ティン・ホイッスル入門講座

ティン・ホイッスル入門講座

アイルランドで演奏されているたて笛ティン・ホイッスルは、誰でもすぐに音を出すことができ、指遣いも簡単です。
ケルトの美しい曲や楽しいダンス曲を、基礎から丁寧に手ほどきします。
楽器は1500円程度で手に入りますので、音楽が未経験の方もお気軽にご参加ください。
貸し出し楽器もあります。グループレッスンで90分を予定しています。

講 師 ケルト笛演奏家・畑山智明 氏
場 所 The Celts(ザケルツ)
福岡市中央区警固1-1-23  ℡Fax092-714-0112
日 時 5月23日(日)10:30~12:00
定 員 20名
参加費 2500円(教材プリントあり)
申し込み 当局事務局へFAXまたメールでお願いします。

「ケルトの笛の世界」コンサート

「ケルトの笛の世界」コンサート

アイリッシュ・フルート、ティン・ホイッスルなどを駆使し、時代と地域を越えてケルトの音楽をスケッチするケルトの笛演奏家、hatao(畑山智明)さんの福岡では初めての本格的なコンサート。10年前に映画「タイタニック」を見て以来、ケルトの笛のとりこになり、アイルランド、スコットランド、ウェールズ、イングランド、フランスのブルーターニュなど・・・旅して学んだ旋律の数々をnami(上原奈未)さんのピアノアンサンブルとともにお楽しみください。
翌5月23日にはアイルランドのたて笛「ティン・ホイッスル」入門公開講座を予定しています。どうぞ奮ってご参加ください。

演 奏 笛・畑山智明氏  ピアノ・上原奈美 氏
場 所 九州キリスト教会館 ホール(4F)
福岡市中央区舞鶴2-7-7 ℡092-712-6808
日 時 5月22日(土)18:30~20:30  開場18:00
チケット 前売り 2500円   (学生前売り 1500円)
当日券 3000円   (学生当日 2000円)
主 催 日本ケルト協会
後 援 福岡市、福岡教育委員会
(財)福岡市文化芸術振興財団
(財)福岡県国際交流センター
福岡EU協会
朝日新聞社
読売新聞西部本社
FM福岡
LOVEFM
天神FM
クロスエフエム

アイルランドみやげ話 2009-2010 -モノたちが語るダブリン

アイルランドみやげ話
2009-2010
-モノたちが語るダブリン

早稲田大学文学学術院教授  栩木伸明氏

 2009年4月から2010年3月までの一年間、ダブリンで暮らした。
-というか、この文章を書いている今、ぼくはまだダブリンに住んでいる。今回の滞在では、ふとしたきっかけー最初は一冊の古本だった-から歴史や文化をさまざまに秘めたモノたちとの出会いがはじまり、それらのモノが語るアイルランドの話をエッセイに書いてみる習慣がついた。
ケルティックタイガーの余波のせいか、アイルランドで本格的な骨董品を探そうとすると、品薄だし、値段がとても高い。しかし、ぼくが求めているのは高価なアンティークではなくて、フリーマーケットに出ているガラクタや、その昔売られていたみやげものや、日曜画家が描いた絵のたぐいである。ちょっと素性が怪しいかったり、正体が忘れられていたりするそれらの物品をじっくり眺め、耳を傾けていると、モノたちは自分の物語を語りはじめる。
今回の講義では、この一年間に出会ったいくつかの古いモノ、新しいモノが語りだす身の上話に耳を傾けながら、ダブリンという都市に刻まれた歴史の痕跡を探り出してみたい。手に取ることができるちっぽけなモノの背後に広がっている、バイキング時代のダブリン(クライストチャーチや聖パットリック大聖堂)、18世紀に近代都市の体裁を整えたダブリン(ジョージアン様式の整然とした街並み)、ジョイスの『ユリシーズ』の舞台になったダブリン(タクシーによく似た二輪馬車であふれていた)などを、ヴァーチャルツァーしてみたいとおもっている。

日 時 2010年4月25日(日)14:00~16:00(13:30開場)
場 所 あいれふ講堂<10F> 福岡市中央区舞鶴2-5-1
参加料 一般 1,500円  会員 無料 *当日 会場で直接受付けます。
主 催 日本ケルト協会
後 援 福岡市 福岡市教育委員会

ケルト文化圏の詩人の作品を読む2010

ケルト文化圏の詩人の作品を読む2010

アイルランド文学ジェームズ・ジョイスの有名な作品「ダブリン市民」を原書で読んでいきます。
この輪読会では『ダブリン市民』のなかでも比較的読みやすい作品をいくつか取り上げ、原文で精読していきます。 ジョイスに興味があり、その文学世界を知りたいと望んでいらっしゃるかとはこの機会をぜひお見逃しなく!

講 師 帝京大学教授 日本ケルト協会会員 木村俊幸
日 時 毎月第1金曜日  18:00~19:30
場 所 The Celts(ザケルツ)
福岡市中央区警固1-1-23 KIKUEビル1F
℡092-714-0112
参加費 各回1000円
定 員 10名
会員を対象とした少人数の学びの会です。
途中からの参加も可能です。
なるべく早くお申し込みください。担当:野畑0940-43-0633

15周年記念行事 ケルティックフェスティバル

15周年記念行事 ケルティックフェスティバル

12月6日 ケルト・アイリッシュ音楽と
ダンスのつどい
場所  アクロス福岡円形ホール
入場料  500円
12月8日~13日 ケルト・アイルランド文化の交流展 アクロス福岡交流ギャラリー
12月8日 講演会 アイルランドの「ケルト」紀行
13:30受付/要予約 14:00~16:00
エッセイスト 武部好伸氏
12月9日 ワークショップ
14:00~16:00
書道・福岡書芸院主宰 前田鼎之 氏
游游古代文字
12月10日 ワークショップ
14:00~16:00/要予約
カリグラファ・スタヂオポンテ認定講師 森 貴美子 氏
カリグラファ  「ケルト文字のThank Youカード」
12月11日 シンポジウム
14:00~16:00
交流展出品作家によるトーク
The Spairal of Peace
私のピースプロジェクト
12月12日 シンポジウム
14:00~16:00
交流展出品作家によるトーク
The Spairal of Peace
私のピースプロジェクト

漢とローマ~倭とケルト

漢とローマ~倭とケルト

九州歴史資料館 館長 西谷  正 氏

今から2千年ほど前、ユーラシア大陸の東と西に、二つの大きな文化圏があった。東の文化圏とは漢帝国を中心としたものであり、そして、西の文化圏とはローマ帝国のそれであった。また、二つの文化圏の周辺には、それぞれ、異民族の文化圏が見られた。東の漢帝国の周辺文化圏の一つが、その当時、漢帝国から倭と呼ばれた現在の日本列島において認められる。
漢帝国は北方の草原地帯を舞台に強大な勢力を形成し、南方へ進出を計っていた匈奴を牽引するため、倭をその冊封体制下に組み入れようとした。一方、漢帝国とはシルク・ロードのオアシス・ルートで結ばれた西方に、ローマ帝国が位置した。ローマ帝国は、その版図拡大の過程で、現在のイングランドのケルトへと進出した。ここにおいて、西のローマ帝国とケルトの関係を、東の漢帝国と倭のそれとの比較から、二つの地域間に見られる共通性と相違点を見出したいと思う。
たとえば、ローマ帝国のファートに対して、ケルトはヒルフォートで対抗した。それに対して、漢帝国の場合は、群県治所の設置が見られたが、漢帝国の直接支配を受けなかった倭では、朝貢関係を結んだ。ただ、倭における防衛的な環濠集落はケルトのそれに共通点が見出せる。しかし、防衛対象は、ケルトの環濠集落がローマ帝国であるのに対して、倭のそれは倭内部の周辺諸国であった点は大きな違いである。

アイリッシュダンス公開講座2009

アイリッシュダンス公開講座2009

アイリッシュ ダンサー・振り付師 林 孝之氏(元リバーダンスメンバー)

 (林さんはリバーダンスに感銘を受け、2001年に単身アイルランドに渡り、ストリートパフォーマンスをしながら、ダンススクールに通い、世界選手権などに出場。リムリック大学で本格的に伝統舞踏コースを修了し、リバーダンスのメンバーとして世界ツアーに参加されています。 「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれています。日本におけるアイリシュダンスの第一  人者です。)
今年度は12月6日に当会の15周年記念行事としてアクロス福岡・円形ホールで「ケルト・アイリッシュ音楽とダンスのつどい」を開催いたします。当講座もダンス部門で参加いたしますので、その練習を含めて公開講座を行います。

ケルトの水脈 ~ブルターニュ(ブレイス)がケルトを意識するとき~

ケルトの水脈
~ブルターニュ(ブレイス)がケルトを意識するとき~

女子美術大学教授    原 聖 氏

 ブルターニュ(ブレイス)では、現在、「ケルト間交流祭り(フェスティバル・アンテールセルティック」というイヴェントが40万人もの観客を集めて開催され、「ケルト・サークル(セルクル・セルティック)」という伝統舞踏の愛好家団体は、200を超える支部をブルターニュ全域にもっている。ブルターニュにとって「ケルト」とは、アイデンティティの重要な部分であり観光資源ともなっているのである。
フランスにおける「ケルト」は、16世紀に登場し、当初は「ガリア(ゴール)と同義だった。反フランス的な民族主義の核として「ケルト」が意識されるようになるのは、19世紀半ば以降である。こうしたなかで、民俗学が対象とする、生活習慣や民話に含まれる、キリスト教に包摂されないような部分が「ケルト的」とみなされるようになるのである。
同時に、ケルト諸語の同族性をもとにしたケルト語圏の交流活動が始まる。
これが、はじめに紹介したイヴェントや団体にまでつながっているのである。
こうした「ケルト」について、具体的事例を通して解説する。

「水上往還」 ~アイルランドにおける航海譚と異界の風景~

「水上往還」
~アイルランドにおける航海譚と異界の風景~

中央大学教授  松村賢一 氏

アイルランドに残存する数多くの神話や伝統は古代・中世の物語として今に伝えられていますが、その源はストーリーテリングとよばれる《語り》でした。ストーリーテリングは伝承の過程で変容しながらも、多くが12世紀のアイルランド修道院文化の黄金期を経て文字に写されていきました。中でも異色な物語群に中世の航海譚があります。『ブランの航海』は最も古い航海の物語とされ、日本古代の常世の国を彷彿とさせる異界の風景が存分に写し出されています。妖精の誘いをうけ、潮路はるかな「女人の国」を訪れたブランの一行がアイルランドの岸辺に還って来た時には、幾百年が過ぎていました。この話はどのような心性から生まれたのでしょうか。万葉集や丹後風土記逸文などに遡る神仙譚の浦島子に似ているところがあります。
このほかにラテン語による『聖ブレダンの航海』と酷似した『マールドゥーンの航海』、アイオーナ島から二人の修道士が海上巡礼する『スネーフサとリーラの息子の航海』、天国と地獄をモチーフにした『コラの末裔三兄弟の航海』などがあります。とりわけ『コラの末裔三兄弟の航海』はキリスト教の贖罪巡礼をめぐる航海譚ですが、贖罪ではなく悟りとして観音菩薩のもとに生まれ変わることを願った日本の僧たちの補陀落渡海についても触れたいと思います。