「水上往還」 ~アイルランドにおける航海譚と異界の風景~

「水上往還」
~アイルランドにおける航海譚と異界の風景~

中央大学教授  松村賢一 氏

アイルランドに残存する数多くの神話や伝統は古代・中世の物語として今に伝えられていますが、その源はストーリーテリングとよばれる《語り》でした。ストーリーテリングは伝承の過程で変容しながらも、多くが12世紀のアイルランド修道院文化の黄金期を経て文字に写されていきました。中でも異色な物語群に中世の航海譚があります。『ブランの航海』は最も古い航海の物語とされ、日本古代の常世の国を彷彿とさせる異界の風景が存分に写し出されています。妖精の誘いをうけ、潮路はるかな「女人の国」を訪れたブランの一行がアイルランドの岸辺に還って来た時には、幾百年が過ぎていました。この話はどのような心性から生まれたのでしょうか。万葉集や丹後風土記逸文などに遡る神仙譚の浦島子に似ているところがあります。
このほかにラテン語による『聖ブレダンの航海』と酷似した『マールドゥーンの航海』、アイオーナ島から二人の修道士が海上巡礼する『スネーフサとリーラの息子の航海』、天国と地獄をモチーフにした『コラの末裔三兄弟の航海』などがあります。とりわけ『コラの末裔三兄弟の航海』はキリスト教の贖罪巡礼をめぐる航海譚ですが、贖罪ではなく悟りとして観音菩薩のもとに生まれ変わることを願った日本の僧たちの補陀落渡海についても触れたいと思います。

CARA第19号 2012年3月

会報誌cara第19号
会報誌cara第19号

■アイルランドと日本の出合い
~イェイツ『鷹の井戸』をめぐって
高橋睦郎

■イェイツの劇作品入門
河野賢司

■イェイツの初期の恋愛詩について
木村俊幸

■イェイツとアイルランド
-神話と紛争に生きた詩人
木原謙一
■亡霊のアイルランド
ジェームズ・ジョイスを中心に
田多良俊樹

■イェイツと女性たち   -過去、そして現在
大野光子

■アイリッシュハープの歴史~
18世紀の復興運動と愛国主義
寺本圭祐
■佐渡が島と火焔土器を訪ねる旅
山本啓湖

■会員投稿
私とケルトの出合い
森 玉枝

■アイルランド通信
「ドニゴール/デリー通信」
大倉純子
「リトル・ミュージアム・ダブリン」
織田村恭子


会報誌CARAバックナンバーご紹介

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アイリッシュダンス公開講座&自主練習会2011

アイリッシュダンス公開講座&自主練習会2011

アイリッシュダンス公開講座4回シリーズ
 トラディッショナルコース
(6月から4回シリーズ)

今回は参加形態やダンス構造にもある社交性に重きを置き、楽しさを広く知っていただきたいと思っております。
もちろん控えめで端正な見た目の美しさも徐々に求められればさらに素晴らしく、皆さんのやる気も高まることでしょう。
4回の講座で出来ることは限られていますが、セットダンス、ケーリーダンスをメインに、簡単な2ハンドダンス、そしてソロとしてはシャンノースダンスに挑戦してみましょう。トラディショナルなグループダンスは共通言語のようなものですから、いくつかマスターすれば、自分たちの楽しみとして踊る喜びを味わえますし、アイルランド本国はもちろん、世界中から集まるアイルランド好きな人と楽しく交流も出来るでしょう。
理解を深めるためのバックグラウンドとして、興味深いお話や貴重な映像もご紹介します。
1、2回のクラスでセットダンスを1つ、トラディショナルステップダンスのステップを1、2、2ハンドダンスを1,2というペースで様子を見ながらゆっくりと進めます。課題をこなすよりも、皆さんが自立して助け合いながら習得して行かれるよう指導させていただきます。(講師:宮澤紅子)

講 師 トラディッショナルコース 宮澤紅子 氏
第2回日時 11月13日(日)
 セットダンスクラス 15:00~16:50
 トラディッショナルステップダンスクラス 17:00~19:00
場 所 福岡市立 中央体育館
福岡市中央区赤坂2-5-8 TEL092-741-0301
参加費
各クラス 一般4500円 会員・学生4000円
定員 20名(最低催行人員15名)
服装など 服装は動きやすいもの。
靴はヒールに多少の高さがあり、摩擦の大きすぎないもの。
セットダンスシューズ、チップのないタップシューズのような形・造りが適している
バレーシューズよりはスニーカー、スニーカーよりは皮革製ヒール付き靴が適しています。
特に靴については初回に講師に相談が可能です。
次回について 10月の開催日時については
決まり次第お知らせいたします。
主催 日本ケルト協会  担当/山本

毎月2回 日曜日(随時)

自主練習
場 所 中央体育館など
開催は 会場の都合により変更になる場合もあります。
その場合は早めにお知らせいたします。
初心者クラスは 全く初めての経験がない方でも判りやすく基礎から指導していきます。
経験者クラスは 今まで当会のダンス講座を受けられた方やダンスの経験がある方が対象です。
詳細は 直接担当者へ
森下:harry_morishita@live.jp

イェイツと女性たち—-過去、そして現在

イェイツと女性たち—-過去、そして現在

愛知淑徳大学名誉教授 大野光子 氏

 W.B.イェイツの生涯と作品については、4月の「イェイツ-その生涯と業績」展の期間に、4人の講師の方たちがそれぞれのご専門の立場から語られましたので、私はイェイツと女性たちとの文学的・人間的かかわり方に焦点をあてて、お話したいと思います。
アイルランドの激動の時代を生きたアングロ・アイリッシュ詩人イェイツの周囲には、常に時代の先端を行く知的で活動的な女性たちがいました。独立運動の中で出会った運命の女性モード・ゴーンもその一人で、イェイツの詩神(ミューズ)として多くの作品中に姿を留めることで知られています。しかし、今回は特に、生涯イェイツを支え抜いた妻ジョージにも光をあててみます。彼女は当初、若き英国人妻として、作品のインスピレーションとなり、後年はイェイツの全著作の管理保護者としてイェイツ研究の発展に尽くしました。2002年に刊行されたアンサドルマイヤ-著『イェイツ夫人伝』に続き、今春同氏編注による『イェイツ夫婦書簡集』がついに出版され、偉大な詩人の妻の真の姿と貢献が明らかにされています。
「過去」の女性たちと、先駆詩人たるイェイツに触発された作品を書いている「現在」の女性作家・詩人たちにも視線を向けてお話しますが、当然のことながら、19世紀末から21世紀に到る、アイルランドの社会状況にも触れることになと思います。

日 時 10月2日(日) 14:00~16:00(13:30開場)
場 所 婦人会館 視聴覚室   (あいれふ) 8F
福岡市中央区舞鶴2-5-1
℡092-712-2662
参加費 一般1500円  会員無料
当日開場で直接受け付けます。
主催 日本ケルト協会 事務局 福岡市博多区麦野1-28-44
℡092-574-0331
http://www.celtic.or.jp   keiko-y@celtic.or.jp
お問い合わせは 担当 稲永へどうぞ
TEL092-812-0939
後援 福岡市・福岡市教育委員会

亡霊のアイルランド:ジェイムズ・ジョイスを中心に

亡霊のアイルランド:ジェイムズ・ジョイスを中心に

中村学園大学流通科学部講師 田多良俊樹 氏

 「モダニズムの巨匠」たるジョイスが、初期の短編集『ダブリン市民』において、亡霊をどのように扱っているのかを検討してみたい。まず、厳密な意昧ではどこにも亡霊が登場していないように見える短編に、実は亡霊が登場していることを確認する。この「ゴースト・ハンティング」の作業を経て、ジョイスが、その文学的キャリアの初期の段階から、アイルランドにおける心霊主義や神秘主義といった文化的伝統に反応していた可能性を探る。
講演日は初夏の頃。今回のように、ジョイス文学における亡霊を語る=怪談をするの一興かもしれない。いないと思っていた亡霊がいたと分かって「ヒヤッ」とするのを十分に楽しむために、聴衆の皆様には、邦訳でも良いので『ダブリン市民』を事前に一読されたい

The Life and Works of William Butler Yeats ウイリアム・バトラー:イェイツ—その生涯と業績—

The Life and Works of William Butler Yeats ウイリアム・バトラー:イェイツ
—その生涯と業績—

パネル展とサロンセミナーおよび講演会

 ウィリアム・バトラー・イェイツはアイルランドで最も有名な詩人、劇作家であり、19~20世紀を代表する詩人の一人です。1923年にノーベル文学賞を受賞した際には、その霊感に満ちた詩が「アイルランド国家全体の精神を表現している」と称賛されました。イェイツはアイルランド復興、独立戦争、アイルランド国家の成立という激動の時代を生き抜きました。
本展は、アイルランド国立図書館の常設展をパネルにして彼の生涯と作品、そして当時の大論争への貢献に光を当て、その業績を讃えるものです。今回の福岡展が、日本全国巡回展のオープニングとなります。なお会期中は、研究者によるサロンセミナーを聞くほか、詩人・高橋睦郎さんにイェイツと能の関わりなどについて語っていただきます。多<の方々のご来場をお待ちしております。

2011年4月6日(水)~4月10日(日)

パネル展 福岡市赤煉瓦文化館
サロンセミナー
講演会 こくさいひろば(アクロス福岡3F)
●パネル展「ウィリアム・バトラー・イェイツ–その生涯と業績」
4月6日(水)~10日(日) 10:00~21:00 (最終日は~17:00)
●サロンセミナー  定員になり次第締め切ります

○「イェイツの劇作品入門」 講師 九州産業大学教授 河野賢司 氏
4月7日(木)
18:30~20:00
主にイェイツの演劇作品をひと通り紹介し、アビー劇場での公演活動との関連や、イェイツ演劇の特色なとについて、イェイツのことをほとんど知らない方々にもわかるような、入門的な講話を予定。
○「イェイツの初期の恋愛詩について」 講師 帝京大学教授 木村俊幸 氏
4月8日(金)
18:30~20:00
イェイツの初期の恋愛詩における、愛の形について、19世紀末のアイルランドの政治的、文化的状況を背景にしつつ、実際に原詩を読みながら話す。
○「イェイツとアイルランド–神話と紛争を生きた詩人」
講師 北九州市立大学教授 木原謙一 氏
4月9日(土)
18:30~20:00
詩人としての長い活動の中で大きくスタイルを変えたことで知られるイェイツ。彼の生涯の課題は「わが民族のために書<」であった。前期の幻想的な「ケルトの薄明」の詩とアイルランド紛争を背景に言かれた後期の詩に一貫して流れるテーマを探る。
    サロンセミナー開催要項
定員 各セミナー 30名(要予約
会員は優先的に受け付けますが建物が古い関係で定員があります、予約をお願いいたします。
会場 (福岡市赤煉瓦文化館
福岡市中央区天神1-15-30
TEL 092-722-4666
●講演会 「アイルランドと日本の出会い~イェイツ『鷹の井戸』をめぐって~」
お話と朗読とビデオ  詩人 高橋睦郎 氏
能「鷹井」のこと 高橋睦郎
ユーラシア大陸の西の果てに浮かぶ島国アイルランドの詩人、W・B・イェイツが、東の果てに浮かぶ島国の日本の伝統劇、能楽の影響を受け、戯曲『三鷹の井戸』を書いた。
このアイルランド劇を能楽に戻せばどうなるか。その作業の体験を通して、西洋演劇の淵源であるギリシャ悲劇と日本伝統劇の極北である能楽との相違、二つの交流の先に見える創造の可能性について聴衆のみなさんと考えてみたい。
日時  4月10日(日) 13:30~16:00 (受付13:00~)
定員 100名 先着順 (定員になり次第締め切ります)
会場 (財)福岡県国際交流センター「こくさいひろば」
福岡市中央区天神1-1-1 アクロス福岡3F
TEL 092-725-9200
主催 日本ケルト協会
共催 (財)福岡県国際交流センター、アイルランド大使館
後援 福岡県、福岡市、福岡市教育委員会、(財)福岡市文化芸術振興財団、(財)福岡県国際交流センター、福岡EU協会、福岡文化連盟、西日本新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、NHK福岡放送局、九州朝日放送、TNCテレビ西日本、RKB毎日放送、TVQ九州放送、日本イェイツ協会、朝日新聞社、FBS福岡放送
お問い合せ・お申し込み
日本ケルト協会
TEL ・FAX 0952-574-0331

CARA第18号 2011年3月

会報誌cara第18号
会報誌cara第18号

■アイルランドみやげ話
-2009-2010~モノたちが語るダブリン
栩木伸明

■ブリテン島
-新石器時代・青銅器時代の埋葬と社会
溝口孝司

■アイリッシュダンスの歴史的変遷
山下理恵子

■スコットランドのバグパイプと
ケルト文化における位置づけ
山根 篤

■会員投稿
ハーン来日120年後の松江を訪ねて
筒井正二郎

■アイルランド通信
「アイルランド語学習事情・イン・デリー」
大倉純子


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ケルト文化圏の詩人の作品を読む2011

ケルト文化圏の詩人の作品を読む2011

アイルランド文学ジェームズ・ジョイスの有名な作品「ダブリン市民」を原書で読んでいきます。
この輪読会では『ダブリン市民』のなかでも比較的読みやすい作品をいくつか取り上げ、原文で精読していきます。 ジョイスに興味があり、その文学世界を知りたいと望んでいらっしゃるかたはこの機会をぜひお見逃しなく!

講 師 帝京大学教授 日本ケルト協会会員 木村俊幸
日 時 毎月第1金曜日  18:00~19:30
場 所 The Celts(ザケルツ)
福岡市中央区警固1-1-23 KIKUEビル1F
℡092-714-0112
参加費 各回1000円
定 員 10名
会員を対象とした少人数の学びの会です。
途中からの参加も可能です。
なるべく早くお申し込みください。
担当:稲永℡ 092-812-0939

ケルト・アイリッシュ音楽祭

ケルト・アイリッシュ音楽祭

John John Festival & baobab aruk band
ケルト・アイリッシュ音楽シーンで
いま、ノリノリの”John JohnFestival”と聴かせる”baobab aruk band”の2つのグループを迎えてのケルト・アイリッシュ音楽祭。優しい旋律が、軽快なリズムが、時には哀しみに満ちて・・・。
深い森の中で奏でるケルト・アイリッシュの音色。その魅力と醍醐味を住吉神社能楽殿で、たっぷりとご堪能下さい。

John John Festival
こよなくアイルランド音楽を愛する3人組。
フィドル、ギター、うた、それにプラスしてアイルランドの太鼓バウロンで奏でる音楽は圧巻、聴きごたええ十分です。
今回はCD発売記念ツアーとして、参加サポートミュージシャン2名を加えた、初のフルバンド編成で楽しさ満載です。
また、映画「ハナミズキ」にもグループの中の2名が楽隊で参加しています。

baobab aruk band
ケルトミュージックを中心に、古楽器から現代楽器、トラディショナルからポップスまで自由に伸びやかに演奏します。自然の中で見た景色や感覚を音にかえる、まるでマジシャンのようです。
その音色はあくまでも魅力的。2005年には「愛・地球博」出演。2007年ニュージーランド20公演の海外ツアー。九州の地で生まれたサウンドを存分にお楽しみ下さい。

場 所 住吉神社 能楽堂
福岡市博多区住吉3-1-51 ℡092-291-2670
日 時 12月19日(日)14:00~16:00  開場13:30
チケット 前売り 3500円
当日券 4000円   全自由席
主 催 日本ケルト協会
チケット 取り扱い
チケットぴあ
ローソンチケット
The Celts 他
後 援
(予定)
福岡市、福岡教育委員会、(財)福岡市文化芸術振興財団、
((財)福岡国際交流協会、朝日新聞社、毎日新聞、読売新聞西部本社
福岡文化連盟、RKB毎日放送、KBC九州朝日放送
Love FM、FM福岡、天神FM、クロスFM 他